北秋田市 杣(そま)温泉→森吉山荘→あゆっこ

残雪がまだまだ山肌を覆う三月のある日、北へと向かいました。
ウチでじっとしていられない時、私はついハンドルを握り、遠出してしまいます。
これは若い時からの癖なのでもう死ぬまで治らないでしょう。
この日も審判の日を待つ中でどうも心が落ち着かず、気がついて見たら北に向かっていた次第です。
かねてより訪れてみたかった北秋田市(旧森吉町)の「杣(そま)温泉」が目的地でありました。
向かう道路のほとんどがアスファルトがむき出しになり、山深い森吉の地にも遅い春の訪れが感じられましたが、油断して飛ばしていると、いきなり圧雪路になってハンドルを取られ思いっきり蛇行したり(少しやばかった)、所々で小規模雪崩が発生してたりして、到着までかなり神経を使う運転が続く県道309号線でありました。

そんなこんなで約三時間位で目的地の案内看板まで到着です。
本荘から行くとなると、間違っても"そんま"温泉とは言えないほどの距離と時間でした (自爆)
さらにここから橋を渡り、車一台しか通られないような細い曲がりくねった道を進みます。
そしていざ目の前に現れた秘湯は・・・

思わず拍手をしたくなるような素晴らしい佇まいであります。
これぞ山里の温泉、秘湯なのであります。
ラーメンではありませんが、食べる前から美味しいのがわかるのと同様、入る前から心身ともに温まる予感がバチバチするのであります。
私の他に誰もいない駐車場に車を停め、温泉パスポート本を握りしめたところで、さあ入館であります。
「ごめんくださーい」 ・・・・・・。
「すみませーん」 ・・・・・・?
「お風呂、お願いしまーす」・・・・・(泣)
呼べども叫べども無反応の館内です。
冷静になりよーく耳をすませてみると、どうも玄関奥の居間らしき空間からテレビの音が聞こえます。
「ははあ、テレビの音で私の声がかき消されてるのかな。それならば・・」
と今度はかなり大きめの声で
「ごめんくっださーい!!」
と居間に向かって叫びますが、それでもイスラム教の開祖・ムハンマドです (爆)
いや、無反応です。
仕方ないので、靴を脱ぎ室内に上がらせていただきます。
そして居間の中を覗くと・・・・。
そこには一人の女性がテレビを見ながら居眠りをなさっておられました(爆)
きっとここの女将さんなのでしょう。
一時過ぎの到着でしたから、お昼ご飯後のお昼寝のタイムだったと推測されます。
非常に気持ちよく寝ておられる方を起こすのは大変忍びなかったのでありますが、
私も早くお風呂に入らせていただきたかったので、「コンコン」とふすまのガラスを手で叩きます。
するとその音で慌てて飛び起きた女将さんがようやっと対応してくださいました。
「これでお願いしてもいいですか・・?」
と温泉パスポートをそっと差し出し、400円の入浴料を100円負けてもらって300円を支払うのですが、なぜかその行為が申し訳なく思えてしまいます・・。
その後、大浴場までの経路を教えてもらいます。
初訪の私にはなんとも館内が複雑でしたが、またそれも良い雰囲気なのでありました。



階段の昇降を何度か繰り返し、離れのようになっている浴場へと到着します。



思った通り先客は誰もおらず、オフシーズンの平日午後の特権を見事に得るわけです。
男湯のみならず女湯も誰もおられないようで、浴室には、源泉から流れてくるお湯がひたひたと湯船を充たしていく心地よい音しか聞こえません。

窓から見える風景は、このように一面の雪景色です。


肝心のお湯は、アルカリ性特有のヌルツルといった泉質で、温度はというと日頃ぬるめのお風呂に入っている自分にとっては少し慣れるまで時間がかかる熱さでした。

しっかりとシャンプー、ボディーソープは備えられておりました。
それにしてもこれでもかって言うくらい長閑です。
長閑すぎて逆に緊張するほどです。
気分的、心身的に半分ぐらい暖まったところで、せっかく遠方より来たのですから露天風呂にも入らねば勿体無いと思い立ち、そそくさと内湯を上がります。

館内通路から見える源泉湧出地。

いざ内湯から見えた露天風呂へ向かいます。
その露天風呂へ行くには、さっき入ってきた玄関を一旦外に出て、工事現場の足場のようなものが敷かれている通路を通り向かいます。
その足場が雪解け水でびしょびしょなため玄関に無料の貸し出し長靴が置いてあります。

最初、初訪の私はこの長靴を何のために使うのかわからず内湯に向かう時に持っていこうとしたため、女将さんからたしなめられてしまいました(笑)
露天風呂も貸し切りです。

つーかここは完全に混浴らしいので先客がおられたら非常に気まずかったと思います(笑)
ことに若い女性がいたらどうしたらよかったものでしょう(爆)
さすがの私でもその場で親しく話す勇気はありません(笑)

ヌルツルのお湯は内湯で半分ほど暖まった効果と相まって、全身をポカポカにしてくれます。
やはりここの泉質は素晴らしいです。



露天風呂から見渡せる風景は、きっと都会人ならば大喜びでしょう。大いなる自然に抱かれているという感じが嫌と言うほど感じられます。この露天に浸かれば、間違いなく都会でギスギスした気持ちが癒されることでしょう。

私はこの杣温泉の体験を通じて、かつてどっぷりとハマったつげ義春の「ゲンセンカン主人」を思い出してしまいました。


今時の若い子達にも是非読んでいただきたものです。つげ義春さんは。
読み終わった後は、間違いなく人生の落ちこぼれ、落伍者に憧れるでしょう。
このゲンセンカン主人とともに併せて「無能の人」なんて読んだら、生きる希望すら薄れていくこと必至です(笑)
ん、まるでなんだか今の自分のようではないか・・・・(自爆)
とまぁ、つげさんもこの宿を訪れたらきっと喜んだことでしょう。。。
そんな素敵なところでした。
なお、この杣温泉では3月末まで補助金制度を使って安く泊まれるようです。
帰り際、外にある立派な夫婦杉を拝見しました。
これほど立派な夫婦杉はなかなかお目にかかることがありません。


樹齢は約400年と書いてあります。
二本ともこの場で400年ひたすら動かず屹立していたことに思い耽り、ひっそりとした感動を覚えます。
落雷、火災など、すべの厄災から免れ生きてきたことに感動を覚えたのです。

そんなしみじみとした気持ちのまま、続いてすぐ近くにある森吉山荘を訪れました。
ここは一年半ぶり位の二度目の訪問です。
泉質は先程の杣温泉と同じものです。
国民宿舎ですから、建物は杣温泉とは違い、近代的な造りとなっています。

この日は露天風呂が故障と言うことで入れないようでしたが、実際にお風呂の温度を確かめてみるとぬるめのお湯だったので普通に浸かることができました。

ただし露天風呂の屋根の上には大量の雪が残っていましたので、それが万が一頭上に落下したら大変なことになるので、あえて閉鎖していたのかもしれません。
(写真は一年半前の訪問時のものです。)


私はサウナと水風呂と露天のぬるめのお湯の行き来を何度も繰り返しました。

ここのサウナの心温まるサービスとして、背中にもマットを敷いてくれていることがあげられます。

(前回訪問時は背中側にはマットがありませんね)
おかげで”サウナあるある”の、壁にもたれかかった時の「あっちーー!」がなく、小さいながらもとても気の利いたサービスだと思いましたねぇ。
今回の訪問での浴室内の写真がないのは先行客がおられたからなのですが、この平日の午後に私以外にのんびりと温泉に入っている人がいるとは意外でした(笑)

しかもこの建物の道の先には何もない、言えば悪いですがとても辺鄙な所です。季節柄、近くで何か作業をしていたとか、仕事を終えた人が立ち寄るような所でもなければ、そんな時間帯でもありませんでした。
私みたいによほどの温泉好きっていらっしゃるんですね(笑)




さて三湯目。最後はやはり森吉町にある「あゆっこ」さんです。
初訪です。

何でも鮎養殖のため掘削してわき出た温泉らしく、それ以降鮎の養殖と温泉宿泊施設の二足のわらじを履いて営業している模様です。
愛想の良いフロントの男性に貴重品を預け即脱衣所へ。

預けた貴重品の中に、iPhoneもありましたから、この先は写真がありません (笑)
明るい浴室内は清潔感に溢れ、想像より立派な温泉施設でした。

(公式HPより)
この日二回目のサウナも、狭い(五人で定員かな)ながらも適度な温度(やや低めの天井付近80度)のおかげでゆっくり入ることができました。
ただ、水風呂があれば文句なしでしたね(苦笑)
そういえばここ森吉町は秋田県でただ1人の大相撲の関取・豪風関の出身地でした。何年か前に夏巡業で訪れた際の写真がたくさん壁に貼ってありました。白鵬もこちらに泊まったようです。

(食べログ Medyさんのお写真をお借りしました)
久しぶりの温泉三湯ハシゴツアーのおかげで、めっちゃ体中の毒素が吐き出されたような気がしました。
日頃の不安や嫌なことを忘れられるのもドライブとお風呂の良いところです。
もはや趣味とも言える温泉巡り。(本当はサウナ巡りと言ってもいいのですが)
値段の安さからどうしてもパスポート本に掲載されている温泉を選びがちですが、県内にはまだまだ多くの秘湯・名湯があります。
もう少し暖かくなったら、山菜でも採りがてら、山奥まで巡ってみようかと思います。
って、やっぱり「無能の人」やないか (自爆)
おしまい。
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