湯沢市 湯ノ沢温泉 日勝館
Category温泉

小さな案内看板を見て、国道13号から山中に分け入る。
対向車とすれ違うのも困難な程の狭き道だ。
15分ほど気を使って車を走らせると、やがて行き止まりの地で、温泉宿は自然に溶け込むように私を見下ろしていた。
ここはかつてBS プレミアムの「こころ旅」という番組で、火野正平さんが訪れた場所である。
その番組を観て以来、いつかは訪れてみたいと思っていた。
イメージ的に、自宅からかなり遠いと思い込んでしまっていたが、実際は一時間少しあれば着くような、そんな近場であった。
建物に入るには、目の前に流れる川にかかる木造の古い橋を渡らねばならない。
思わず途中で写真を撮りたくなる。それほど自然が美しい。



苔むした石垣を横目に、情緒ある石段を登っていくと真新しい建物の玄関に到達する。
どうやら先客はいないようだ。
受付でお金を払い、誰もいない館内を歩く。


玄関から右に曲がり、奥に進むと暖簾がかかっている。
誰もいない歴史ある温泉を独り占めだ。






窓の下にはせせらぎ。
気持ち良い緑の風が、涼風となって吹き込んでくる。

これは贅沢だ。
泉質は「アルカリ性単純温泉」pH9.6というから、なかなかのアルカリ性具合である。
湯温もややぬるめで、私にはうってつけなのである。
誰もいないということもあり、一時間ほど湯に浸かる。
童心に戻って、少し泳いでみたりもする。
嗚呼、至福の温泉である。
また、個人的にアルカリ性のお湯は湯冷めせず、相性が良い。

この温泉宿の歴史は古く、日勝という名称も日露戦争に因んでいるらしい。
現在の建物は、数年前に新築されたもので、鄙びた温泉宿を愛する方々を落胆させるには十分かもしれないが、私はそこまでの温泉愛は持ち合わせていない。
とても綺麗で気持ちまですっきりとする素晴らしい建物である。



これまで何度か全面的に建て直しされているようだ。
こうして昔の写真を眺めると、確かに現在の外観も素敵であるが、もっと早く生まれて一度訪れてみたかったと思わされるような雰囲気のものがある。
特に二枚目の時代の建物など、非常に趣がある。立派な唐破風(からはふ)を備え、いかにも温泉宿といった面持ちだ。
おそらく明治期の建築であろう。
洪水か、その影響による土石流で流されてしまったらしい。
帰り際、再び建物を振り返って眺めてみた。
この地の古の歴史が、せせらぎの音とともに一瞬私の脳裏をよぎったような、そんな感じがした。

2015.5.11 訪問
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